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【男性向け】その人は、冬が嫌いだった。

2013-11-11

 

その人は、冬が嫌いだった。

マフラーで鼻先まで隠し、長い髪の毛で顔を覆い、
うつむき、肩をちぢこませて歩くその姿は、
全身で冬を拒絶しているかのようで。

クリスマスも、
お正月も、
バレンタインも、

彼女自身の誕生日すら冬なのに、
彼女はとても簡単に、「そんなの関係ない」の一言で片付けた。

クリスマスは、イルミネーションすら憎み、夜遅くまで残業して、
大晦日から元旦にかけては、年が明けるからなんだと徹夜で仕事して、
バレンタインは、義理チョコを配りまくって残業して、

誕生日は毎年、姿を消した。

3、4日、有給とって、姿を消して、
お菓子をたくさん持って職場に帰ってくる。

ひとりぼっちで、どこどこに行ったとうそぶいて、お菓子を配って回るのだ。

誤解しないで欲しいのは、
冬が嫌いだということ以外、彼女はとても普通の人なのだと云うこと。

ただ、たまたま、
クリスマスが嫌いで、
大晦日やお正月が嫌いで、
バレンタインが嫌いで、

そんな嫌いな季節に、たまたま彼女は生まれてしまった。

なんでそんなに嫌うのかと、聞いたことがあったりした。

「ひとりぼっちだから」

と、家族も、友達も、いるご身分で、
彼女は簡単にそう云った。

クリスマスのイルミネーションを、一緒に歩きたい人がいない、と。
一緒に新しい年を迎えたい人がいない、と。
チョコを贈って愛を確かめたい人がいない、と。

自分がうまれたことを、出会えたことを、喜んでくれる人がいない、と。

嘆いた。
罵った。
恨んだ。
羨んだ。

悲しい、寒いと、冬を嫌った。

そうして彼女は今年も、鼻先までマフラーで覆う。
長い髪の毛で視野を狭め、うつむいて世界を拒絶する。

しあわせな人達を見なくてすむように。

だから僕も毎年、
クリスマスも、
大晦日も、元旦も、
バレンタインも、
残業する。

彼女に「好きだ」と伝えたいがために。

そうして毎年、いえずにおわる。

毎年、彼女の誕生日に有給をとって、家でゴロゴロする。
世界のどこかでひとりぼっちな彼女を想って、
好きだと云えなかった自分を嗤って、
ゴロゴロする。

いま、きみは、

どこにいて、
なにをみて、
なにを食べて、
なにを想っているのだろう。

君が生まれたという大切な日に、たった一人で、

ひとりぼっちで。

今年こそ、云おう。
君が帰ってきたその日に。

「生まれてきてくれて、ありがとう」と。
「君が大好きだ」と。

君は僕をわらうだろうか。

サムネイル 写真素材 足成 様
http://www.ashinari.com/

 

 

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