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冗談きつすぎる。

2014-04-25

頭を撫でてくれてありがとう
いっぱい抱きしめてくれてありがとう
出逢えて幸せでした
どうか幸せになって下さい

前触れなんて何にも感じられないまま、恋人にメールで一方的にふられた。
なんで、どうしてと様々な言葉で引き止めたメールに返事はなく、電話も掛けたが繋がらない。
ダメだ。
完璧ふられた。
思い当たる節が無い訳でもなかったけれど、そんなの恋人になればある程度は出てくるような行き違いばかりで。
こちらとしてはまだまだ関係を続けていたかっただけに、かなり、痛い。互いの両親に紹介とかしあってないけれど、いずれはそんなことも、と考えていた矢先だった。
一週間、「お掛けになった電話番号は、現在使われていないか…」なんつう、かの有名な文言を繰り返し続ける恋人のスマフォに粘り続けたが、とうとう力尽きた俺は、彼女の連絡先やら保存してあったメールやデータ、プレゼントなんかも、出来る限り処分した。
こうでもしないと未練がましく、新幹線で五駅ほど離れた場所に住む彼女に、逢いに行ってしまわない自信が、なかった。

「なんで」「どうして」は何度も考えた。
でもいくら考えてもどれも決定打には乏しくて。
そんなことを考えてぼうっとしていたから、なんて言い訳をするつもりではないけれど、俺はあっさりと交通事故にあった。
不幸中の幸いで、誰もいない歩道の隅っこにある電柱に衝突したらしい。
被害者がいなくてよかった。
混濁する意識の中でそれだけ思った俺は今度、違和感で目が覚める。
目の前にあるのは、よくドラマなんかで見かける手術台の上に設置された、沢山電球のついた「あの」照明だ。
うわあ、俺、マジで事故ったんだ…。
我ながらにドン引きだ。
恋人にふられて事故とか、どんだけだよ。
そんな俺の頭を、優しく撫でる手があった。
イヤイヤイヤイヤ、俺いま、大絶賛手術中だからさ。一般人は入っちゃダメでしょう。
そうして、ようやく、頭の隅に追いやっていた違和感に気付く。
ちょっと待って。
手術中でしょ?麻酔かけてんのに、なんで俺、目ぇ覚めちゃってんの?
これ、やばくない?
よくよく考えると手術用の照明の位置もなんだか妙に近い。
これじゃあ執刀医だって困るだろうにと辺りを見渡して、愕然とした。
浮いてる。
マジか…。
これが所謂臨死体験なのだろうか。
ものは試しと下を見れば、全身血だらけで顔だけ綺麗な俺が、手術の真っ最中だった。
いかな自分の内臓といえど、あんまり見て愉快なものではない。
そうしている間も、俺の頭を優しく撫でる手は止まらない。
ということは、死んだひいばあちゃんだろうか。
わざわざお迎えに来てくれたのか。
御礼をと思い、頭の方に目線を向けて、俺は再度、愕然とした。
「派手にやったね」
飄々とした拍子で、その人物は笑ってみせる。
首には、ぐるりと一周青い痣が残っていて、凄く痛そうだ。
「マジかよ…」
「マジだよ」
脱力する俺に、そいつは綺麗な顔して微笑む。
「戻りなよ。君はまだこっちに来ちゃ行けない」
そうして彼女は、頭を撫でるのと同じ力で、俺を押し戻す。
すうっと、俺は自分の身体に引きずられ、彼女はそのまま消えていった。

マジか…冗談きつすぎる。
俺、お前の遺書メール、消しちゃったよ。

サムネイル 写真素材 足成 様 http://www.ashinari.com/

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