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【掌編集】いまいちばんほしいもの【twnovel】

2014-06-14

 

【短編集。好きなものだけでも、いくつでも】

1.いまいちばんほしいもの

元カレに恋人が出来た、らしい。
随分と入れ込んでいる、らしい。
私の送ったメールに返すのも億劫なくらいに好いている、らしい。
伝聞とか推量とか色んなものを重ねて、彼の近況を推し量る。
なんかストーカーみたいだなと苦笑して、それでも彼のアドレスを消せずにいた。
そっか。私、もう要らないんだ。

2.世界一素直じゃない人のお話

昔から「辛い」とか「困った」とか云う事が苦手だった。
きっと自分よりも皆の方が大変だからと、いつしか言葉を飲み込む癖が出来ていた。
友人や兄弟が家庭を持つと、愚痴を言ったり甘えたりという相手がいなくなったと改めて実感する。
君にはホント救われたよねと、今は隣にいない恋人に苦笑した。

3.涙の跡なら自分で拭くわ

子供を産み、恋人と夫婦になる。
そんなありふれた幸せを手に入れる選択肢もあった。
敢えて捨てたのだから「幸せな未来」以上のことを成さなければと自戒していて尚、こぼれる涙があることが、許せなくて。
そんな自分に腹が立つ。
幸せな道を選べばなかったことを後悔しない日はない。
だからこそ、歩みを止める訳にはいかなくて。

4.醜く這いずって生きるがいい!

息をすることさえ億劫で。
毎日毎日こう変わり映えなく適当に生きてしまうと、ある日突然私が消えたとして誰も気付かないんじゃないかって思える。
そんな稀薄な人間関係しか構築して来られなかったのだ、仕方ない。
「居ても居なくても同じじゃん」
自嘲するように夏の風に呟けど返る言葉なんて無い。

5.青の予感

気のせいだと思おうとしていたけど、奴の一言で合点がいった。
普段着で街中を歩いている時よりもスーツで闊歩した時の方がすれ違う男性に見られている気がする。
そんなに似合わないかと肩を落とした私に、奴は一言「お前のスーツ姿はエロい」と宣った。
知るか。
そんなの私のせいじゃない。

6.その小鳥は餌を欲しがらなかった

「なんで誰も私のこと好きになってくれないのかな」と彼女は苦笑した。
きっと可能ならば膝を抱えて泣いていたかも知れない。
「お前が元カレ引きずりすぎてるから手ぇ出せないんだよ」と云えなくて、何でだろうなと、彼女に倣って苦笑した。
さっさと俺にしとけばいいのに。

7.そしたら敗北

仲良くなれば、仲良くなった分だけ、離れてしまう時が辛くて。
そんなしょうもない理由で人を好きになれずにいる。
どうせ貴方もはなれていくんでしょ。
そう思えば、目の前の一歩を踏み出せない。
繋ぎ止める努力すら放棄したというのに、どうして「傍にいて欲しい」と貴方に云えるだろう。

8.響け、響け

不幸だ、と叫(わめ)き立てればいいのに。泣き喚けば、喧しいと一蹴できるのに。
彼女は頑として俯かない。
しかたないと苦笑して、どんなことをも肯定的に見て、正当化して、受け入れる。
気付けよ、お前。貧乏くじ引いてるんだって。なんで愚直なこいつが損するんだよ。
しかたないって諦めんなよ。頼むから。

9.美しくもあり無惨でもある

何度も諦めようとした、忘れようとした。
出来なかったのはきっと、余りにも幸せだったから。
「ごめん、やっぱ好きだ」
私の言葉に彼は、迷惑そうな顔を今度は隠そうともしなかった。
それは明白な意思表示。
ああ、よかった。その顔が見たかったんだよ。
君の優しい顔だけ見ていたら、諦め切れないじゃない。

10.ラストチャンスは二度こない

彼女の泣き方はあんまりにも静かで。
声を殺す方法はとうの昔に覚えたようで、息を細やかに震わせるだけ。瞼をこすっては腫れるからと、頬にこぼれて始めて涙を拭う。
誰だ。
誰がこいつをこんな風にした。
なんで大声で泣かせてやらない。
くそっ、と低く吐き出して、それは自分もかと愕然とした。

11.見えない何かに恋をした

新しい恋人といる時に限って、その人は声が聞きたいとメールを送ってくる。
そもそもさぁ、俺を振ったのお前だよ?一緒に暮らそうっつった俺に、「どうしてもこっちでやりたいことあるから」って。
迷惑ならいいと遠慮する彼女を引き留めるのは憎からず思うから。
嫌いで別れた訳じゃない。

12.明日から空は眺めない

月が好きな人だった。
引っ掻くような三日月よりも、まん丸の満月が。
満月のたびに「月が綺麗だ」と呟く人だった。
前の彼女が月が好きだったんだ、彼はそう綺麗に笑うのだ。
ああ、届かない。
手が届かない。
この人もそんな恋をしていたのかも知れない。
今度は私が、月が綺麗だと呟く番。

13.僕はここにいる、君を思って泣いている

彼女はふらっと旅に出る。
二、三日放って置けばふらっと帰って来て「何処どこに行ったお土産だ」と嘯くのだ。
そんな彼女が一週間待っても帰って来ない。何かあったかと彼女の荷物を調べたら、よく使う物や気に入っていた服がなくなっていた。
自分じゃ彼女を繋ぎ止められなかったのかと、一人咽び泣く。

14.千も承知

その人の才能に惚れたなら、人格者だと思い込むべからず。
これは一体どこで耳にした言葉だったろう。素晴らしいものをつくる人が、必ずしも優れた人ではないという教訓。云わんや、モーツァルトをや、だ。
あんなに自戒していたというのに僕はあったり禁を犯した。
仕方ない。
僕の好みなんだから。

15.この蜂蜜色はあまりに優しい

彼女がそれを「物語」と認識してしまえば、彼女の感情から強制的に切りはなされてしまう。
悲しみも憎しみも喜びも怒りも。フィクションだと判じた瞬間、娯楽となる。
そうして彼女は泣き叫ぶことができない代わりに、文章で感情を昇華する。
なんて不器用な生き方だろう。
俺がいくらでも受け止めるのに。

16.ちっちっち。あれ、懐かない

「君は私には勿体ない。他に好きな女が出来たら、迷わずそっちに鞍替えするんだよ」
初めて云われたときは晴れて恋人となった人間を掴まえて何云ってんだと腹が立った。
それが本音で、自信のなさの裏返しだとわかってから、彼女に何度も囁く。
「大好きだよ」と。

お題配布:ことこと様 http://nanos.jp/ilbat/

サムネイル 写真素材 足成 様 http://www.ashinari.com/

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