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お母さんは、おばあちゃんのこと嫌いなの?

2014-12-07

 

「お母さんは、おばあちゃんのこと嫌いなの?」
「嫌いというか、他人だったら多分、一生関わりたくないタイプの人間かな。でも、良く気付いたね」
「私が自分で気付けた訳じゃないんだけど…」
「……」
「すごく上手に隠してたね」
「子供は多かれ少なかれ親に影響されるからね。あたしがおばあちゃんを嫌いなのは勝手だけれど、あんたにまでそれを強要するのは違うでしょう
「私、お母さんのそういうフェアなところ凄く好き」
「ありがとう」
「どうして?」
「何が?」
「どうしておばあちゃんのこと、嫌いなの?」
「……あの人はね、私を見下すのが好きなのよ」
「例えば?」
「子供の頃、初めて東京駅から中央線に乗った時だったかな、青梅が読めなくてね「あおうめ」って何?ってきいたら、もの凄く莫迦にされたのよ」
「それは、仕方ないことだよね」
「まあ、仕方ないわね。あとは、弁護士になりたいって零したことがあるの、小学生の頃」
「そうなの?」
「あたしのお父さんが死んだ時、子供だから力がないのが悔しくて。同じ境遇の子供を助けるんだって」
「なんて云ったの?」
「あんたならなんて云う?」
「そうだな…弁護士になるためには何が必要なのか、聞くかな」
「あたしがそうやってあんたを育てたから、影響を受けちゃったね」
「でも、これ、凄く良いことだって、この間大学の講義で云ってた」
「あたしも、受け売りなの」
「そうだったんだ」
「でも、おばあちゃんは違った。『あんたの頭じゃ無理に決まってる』って笑い飛ばしたの」
「気持ちはわかるけど」
「わかるけど?」
「釈然としない」
「そうね。あの人は自分の思い通りに子供が育たないことがイヤで、堪らないの。だから、その都度、軌道修正しようとする。手を出して、口を挟んで、子供の人生を操作しようとするの」
「過干渉」
「ちっちゃいことが積み重なって、ある日耐えきれなくて、あたしはここまで逃げてきた。でもいくら逃げてもあの人は追ってくる」
「それしかなかったから」
「だから、広瀬さん……あんたのおじいちゃんと結婚してくれて、本当にほっとしてる」
「後悔してない」
「してないわ」
「縁を切ったことも?」
「知ってたの?」
「聞いたの」
「そう」
「誰にって訊かないんだ」
「妹でしょ」
「うん」
「……きっとあたしが、あの人の老後の面倒をみることになる。そうしたら、あたしは耐えきれなくて殺してしまい兼ねない。妹のためにもそれだけは避けたかった。幸い、妹と母の関係は良好でね、遺産相続も何もかも捨てて、妹に母の老後の世話をお願いして離縁したの」
「離縁って、…よく聞く縁を切るとは違うの?」
「全然別ね。物理的に戸籍を出てしまう。正真正銘あたしとあの人は赤の他人。お互いに何処で生きて、何処で死のうが関係ない」
「過干渉だったんでしょ?よく許してくれたね」
「そのころにはあたしはあの人を避けるようになってたし、あの人もあたしに心底嫌われていることは気付いたみたい」
「でも、今は挨拶に帰ってるじゃん」
「あんたが生まれた時に妹が取り持ってくれたの。出産の時は意地でも世話にならなかったけれど、挨拶くらいにはおいでって」
「叔母さん、お母さんのこと大好きだもんね」
「そうね、あたしもあの子のことは大好きだわ」
「おばあちゃんは、複雑だったんだろうな」
「妙におばあちゃんの話をするじゃない」
「さっき、叔母さんからメールがあったの」
「へえ、なんて?」
「おばあちゃん、危篤なんだって」
「そう」
「うん、そういう反応何じゃないかなって思ってた」
「気を付けて行ってらっしゃい」
「なんで?」
「なんでって、行ってくるんでしょ?」
「そっちじゃないよ」
「……」
「……」
「一緒に行って貰える?」
「申し訳ないけど、行きたくない」
「そっか。叔母ちゃんにそう伝えておく」
「うん」
「……」
「イヤになった?離縁したとはいえ、親の死に目に駆け付けない人間だって
「そんなことでイヤになるような人間に、育てたの?」
「わからない。人は人だから」
「私、お母さんのそういうところ、昔、ほんの少しだけ苦手だった」
「へえ?」
「自分の子供じゃなくて、一人の人間として扱っていたでしょ?他の家の子とかはお母さんがこうしたらどう?って云ってくれるけど、うちは、自分で考えなさいって。助言は貰えるけれど、それだけだったから、他人何じゃないかって思ってた」
「そう」
「でも、私そのお陰で、今まで後悔したことってあまり無い。自分で選んだことだからって納得して生きてこられたの。凄く、感謝してる。おばあちゃんはね、お母さんのそういうところ、…そういう風に私を育てる所すごく気にくわなかったんだって。子供が可哀想だって。でもね、私は、そうは思わないよ。おばあちゃんのお母さんへの育て方も気持ちはわかるし、お母さんの私への育て方も気持ちはわかるの。二人ともきっと、子供のことをもの凄く考えた結果がそうなったんだろうなって」
「さてね」
「そろそろ行ってくるね。おばあちゃんに伝えたい事ってある?」
「無いわ」
「清々しいなぁ。強がりじゃないんだね」
「そうね。そんな気持ちもとっくになくなっちゃったもの」
「そっか。行ってきます」
「喪服は持った?」
「嫌なこというなぁ」
「笑ってるじゃないの」
「笑い事で終わったらいいなって思ったの。行ってきます、お母さん」
「行ってらっしゃい、気を付けてね」

サムネイル 写真素材 足成 様  http://www.ashinari.com/

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